わが家には2匹の猫がいます。生後間もなく2匹で捨てられていたのを引き取って、人工ミルクを与えて育てました。
そのうちの1匹に、服や毛布をかじる癖があります。 この行動は、残念ながら根本的な対策はありませんが、軽減する方法ならあります。
その対策について書いてみたいと思います。
目次
服を食べるのは「繊維摂食」という問題行動
うちの猫は、生後数か月のころに服を食べる癖がはじまりました。
脱いだ靴下やTシャツ、毛布などをかじっていつの間にか穴を開けられてあけられてしまいます。
特に好きなのが、パジャマとして使っているユニクロのフリース素材のルームウェアで、ズボンは常にボロボロで、1シーズンごとに買い替えが必要なほどです。
この行動は「常同行動」と呼ばれる問題行動の1つで、手元にある専門書によると「繊維摂食・齧り」と呼ばれています。
また「ウールサッキング」や「異食症」とも呼ばれます。
常同行動とは、不適切または制限のある環境で飼育されている動物でよく観察される無目的で反復性の行動です。
動物園でトラやクマが同じ場所を行ったり来たりしているのを見たことがあるかもしれません。あのような行動を「常同行動」と言います。
何らかのストレスが加わったときに、そこから逃れたり気を紛らせたりすることで起こってしまう行動です。
つまり原因となるストレスがあって、それを紛らわせるために布をかじり、そのうちに布をかじることが癖になってしまったものです。
うちの猫の場合は、幼いころに何度も叱ったことが原因となったと思っています。はじめての猫の飼育だったため、CDを散らかされたり、ティッシュを全部出されたりしたことで、イライラしてよく叱ってしまっていました。
2匹のうち体の大きかった子の方が先にいろいろなイタズラをしては叱られ、それを見ながら育った体の小さな子の方は、あまり叱られずに育ちました。
その結果、体の大きかった子だけが布をかじる癖がついてしまいました。
獣医師向けの少し古い専門書ですが、易しい文章で書かれていて一般の方でも分かりやすいです。
ウールサッキング・異食症への対策
対策1 かじられる場所に服を置かない
ばかばかしく感じるかもしれませんが、これは原因に関わらずとても効果的です。
専門的な話になりますが、ある行動を強める効果を「強化」といいます。
たとえば問題行動をしているときに、声をかけたり、なだめたり、食べものを与えて気を引こうとしたりすると、これは問題行動を「強化」してしまっています。
服をかじる→飼い主がかまってくれる→もっと服をかじるようになる
また、服をかじるという行動は、ストレスから逃げるための行動になっているわけです。
ストレスがかかる→服をかじる→ストレスが軽減する→もっと服をかじる
「服をかじる」ことが、「服をかじるという行動」そのものを「強化」しているわけですね。そのため、服をちゃんと片づけてかじられなくすれば、この悪循環を断ち切れるわけです。
うちの猫の場合は、洗濯してきれいな衣服はほとんどかじりませんが、脱いだ服や靴下を好んでかむ癖がありました。
そのため、衣服を脱ぎっぱなしにしないことを徹底し、脱いだ服は猫が入れない脱衣所の洗濯かごにすぐ入れるようにしました。
対策2 かじられにくい素材に変える
かじられやすい素材、かじられにくい素材があります。
うちの猫の場合はやわらかい素材が好きで、特にフリース素材のものや柔らかいブランケットが大好物です。一方で、ゴワゴワとした素材はあまりかじりません。
対策1にあるように、とにかく食べる行為を減らすことが大切です。かじられないように素材に変えていきましょう。
対策3 原因となっているストレスをなくす
行動が起こる原因は様々です。
- お腹がすいている
- 近所で騒音や犬の鳴き声がして落ち着かない
- 飼い主がいなくてさびしい
- 飼い主に子どもができて、かまってもらえなくなった
- 飼い主に子どもができて、その子どもが猫にとってはストレス
もし原因を突き止めてなくすことができれば、問題行動も落ち着きます。
空腹を紛らわすためにしているなら、餌の量・回数を変える、餌そのものを変える。
さびしいのであれば、遊ぶ時間を増やす。
近所で騒音があるなら・・・どうしましょう。
子どもについては・・・うちも困っていましたが子どもがある程度成長するまでは仕方ないです。
原因は、それぞれの個体ごとに異なりますし、はっきりしないことも多いです。
遊ぶ時間を増やすことは効果はありますが、時間的に難しい方もいると思います。その子のストレスが何かを考えて、できることから対策してみましょう。
このような、空腹感が少なくなるような療法食にしてみるのも1つです。動物病院の先生に相談してみましょう。
叱ったり、罰を与えてはいけない
逆に、やってはいけない対策もあります。それは叱ったりして罰を与えることです。これは行動の原因がストレスということからも分かると思います。
布をかじって心穏やかにしようとしているのに、叱られることでさらにストレスになるわけです。治るどころか、最悪、飼い主との信頼関係を損ねるおそれもあります。
「しつけや行動矯正を行うときは叱らない。」これはぜひとも守ってください。
まとめ
猫の繊維摂食はなかなか治りにくい問題行動です。
しかし年齢を重ねるにつれてだんだん落ち着いてくることが多く、上に挙げたような対策を行うことで減らしていくことが可能です。
ぜひ、おうちに合った対策方法をみつけてみてください。